仕事の場とは、そこで使う道具、仕組み、システム、商品、部品、廃棄物といったモノの集合体といえます。これらのモノ群ともいえる「状況」が、人々の記憶力に影響を与えることがわかってきています。ビジネス心理学は、そのような「人々の置かれた状況」や他者との関係のなかで、人の思考や記憶、感情を把握し、①個人の能力の向上、②組織の仕組みの変革、③商品開発につなげようとするものです。たとえば「購買行動を促すのは、品揃えの豊富さではなく配置の仕方であり、選択しやすいメリハリのある配列にすべきこと」「顧客の感情のバランスをとる（マイナス面をプラス面で補おうと考える）と売上が伸びる」「暖色系の空間にすると人の回転率が上がる」、あるいは「意志力は、行動の仕方を工夫することにより、鍛えられる」「目標を、方向とプロセスと成果で管理し、行動へと転換していく」など、変革のための改善行動がポイントとなります。本書では、顧客対応から業務プロセスの改善まで、ビジネスを進めるなかで幅広く役立つ工夫や具体例を、マーケティング心理とマネジメント心理の解説を交えて紹介します。

もくじ情報：第１章　ビジネス心理学の原則（「心（気持ち）が人を動かす」は本当か；ストレス対策を組織の変革へつなげる；過去の原因を探さない解決志向の考え方　ほか）；第２章　マーケティング心理（販売の心理；サービスの心理；営業の心理　ほか）；第３章　マネジメント心理（動機づけの心理；能力開発の心理）

匠　英一(タクミ　エイイチ)
東京大学大学院教育学研究科を経て同大学医学部研究生修了。１９９０年に（株）認知科学研究所を東京大学医学部の研究者らと設立。現在、デジタルハリウッド大学教授、日本ビジネス心理学会副会長、（株）人材研究所顧問など。異業種を結ぶ事業企画と人材育成、販促プロジェクト推進を強みとし、人事・組織改革のコンサルタント業務に従事。中央職業能力開発協会のＰＣ検定推進、通信機器販売会社の営業企画部長職を経験するなかでＣＲＭ協議会などを企画・創設（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）