ジャック・ラカンが提出した「剰余享楽」「資本主義のディスクール」といった概念は、現代社会の現象の把握にきわめて有効だ。本書では力強く展開する現代ラカン派の理論を紹介するとともに、うつ、自閉症、ヘイトスピーチといった、臨床や政治社会における広範な事象に応用し分析を試みる。精神分析の言説に新たな息吹をもたらす、ラカン派の俊英による鮮やかな社会論。
もくじ情報：第１部　理論（現代ラカン派の見取り図―ジャック＝アラン・ミレールの議論を中心に；４（＋１）つのディスクールについて―マルクスから資本主義のディスクールへ；性別化の式について―キルケゴールはいかにして男性側の式のリミットを超えたのか？）；第２部　臨床（ＤＳＭは何を排除したのか？―ラカン派精神分析と科学；現代の病としての「うつ」―「現勢神経症」と資本主義のディスクール；「恥の死滅」としての現代―羞恥の構造を読む；自閉症をめぐるフランス的問題）；第３部　政治（レイシズム２．０？―現代ラカン派の集団心理学１；享楽の政治―現代ラカン派の集団心理学２；ラカン的政治のために）

松本　卓也(マツモト　タクヤ)
１９８３年高知県生まれ。高知大学医学部卒業、自治医科大学大学院医学研究科修了。博士（医学）。専門は精神病理学。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）