農業の発展は将来にわたって極めて重要な地球規模の課題です。環境への負荷を増大させずに、持続可能な発展に貢献する研究成果を実用化するにはどうすればよいでしょうか。また、高収量、優れた品質、干ばつ、塩害、その他のストレスに対する耐性、または様々な病気に対する耐性を備えた植物の新品種を開発するための最良の方法は何でしょうか？本書が植物育種の歴史と方法、遺伝子組換え作物やゲノム編集作物に関する世界的な動向を解説することで、これらの疑問に何らかの答えを示すことができれば幸いです。本書の骨格は、欧州連合における科学技術の規制、社会的、政治的判断についてですが、この内容は現在の日本と世界の複雑な状況を知る上で重要です。現在、日本では遺伝子組換え作物はほとんど栽培されていませんが、食卓に並ぶ製品の多くに遺伝子組換え作物が使われています。本書においては、議論するのではなく説明し、植物育種と現代の遺伝子科学に関する議論を、農業、社会、科学技術の役割に関連する広い背景で考えることを試みました。
もくじ情報：１　私たちは農業を営んでいた…；２　…そして再び農業を営む；３　植物育種―過去、現在そして未来；４　主な育種家―誰が植物を育種しているか？；５　植物品種育成者の権利と特許―誰の品種なのか？；６　リスク―本当か、ただの恐れなのか？；７　経済、社会、政治的観点からみたＧＭ植物；８　国際展望；９　農業、育種、新技術―未来への挑戦