内容紹介：赤ちゃんが生まれるまで、ひと夏の間、親戚の家に預けられた少女。怒らず優しく接してくれる親戚との生活は初めて知る愛に満ちていた。だがこの夏もやがて終わりの時が－－映画「コット、はじまりの夏」原作。感情の深みを驚くほど静かに描き出す著者の代表作
アイルランドの片田舎。大家族の中でひっそりと暮らす少女は、夏のあいだ、牧場を営む親戚夫婦に預けられることに。いつ帰れるのかも知らされぬまま始まった、見知らぬ家での新しい日々。ところが、少女を待っていたのは、木漏れ日のように優しい夫婦だった。彼らの愛情は、少女がこれまで知らなかった温もりと安らぎに満ちていた。次第に少女は心を開き、豊かな自然と共に小さな喜びを一つずつ噛みしめていく。しかし、秘密などないはずのその家で、彼女はやがて幸福の影に潜むかすかな亀裂を知ることに―。世界的にも最も優れた短篇に贈られるデイビー・バーンズ短篇賞を受賞。現代アイルランド文学を代表する作家クレア・キーガンの傑作。

鴻巣　友季子(コウノス　ユキコ)
英米文学翻訳家・文芸評論家