慕っていた崇徳上皇の御陵に参った西行が見たものとは？　「白峯」　病に倒れた旅の武士。逗留先の学者と兄弟のちぎりを交わすが――「菊花の約」　怠け者勝四郎、都に上ると里は戦禍に塗れる。そして愛する妻は――「浅茅が宿」　絵が得意な三井寺の僧・興義。求める者には自作画を欲しがるまま与えながら、鯉の絵だけは頑として手放さなかった――「夢応の鯉魚」　高野山へ物見遊山の親子。「仏法」と鳴く鳥に応え歌など詠むも、そこに武士たちが現れ――「仏法僧」　吉兆なら湯が沸き上がるという釜。若い夫婦が祈願したが、釜は虫の声ほどの音も立てなかった――「吉備津の釜」　雨宿り先で邂逅した美しい女を追いかけ、幸せに暮らすはずが――「蛇性の婬」　遊行僧を泊めた老人は、紺染の頭巾をかぶり、「鬼」になった僧の話を始め、あることを懇願した――「青頭巾」　武士・岡左内は、度を越した倹約ぶりで奇人とまで言われた。ある日、黄金の精霊と名乗る老人が枕もとに現れる――「貧福論」

崇徳上皇の御陵に参った西行が見たものは？自由への願いを鯉の絵に託した三井寺の僧・興義は、自ら絵に同化し湖へ。高野山では怨霊になった豊臣秀次一行の宴会に巻き込まれ、雨宿り先で邂逅した美しい女は、蛇に姿を変え―。抑えがたい情念が、此岸と彼岸を越えて暴れ出す。奇才・上田秋成が安永五年（一七七六）に世に放った怪異譚、全九篇。
もくじ情報：雨月物語序；巻之１（白峯；菊花の約）；巻之２（浅茅が宿；夢応の鯉魚）；巻之３（仏法僧；吉備津の釜）；巻之４（蛇性の婬）；巻之５（青頭巾；貧福論）

上田　秋成(ウエダ　アキナリ)
１７３４年‐１８０９年。江戸中期の国学者、歌人、小説家。大坂・曾根崎生まれ。１７７６年（安永５）、剪枝崎人の名で『雨月物語』を刊行