「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」と言われて久しいが、近年、それだけでは脳は元気に働き続けることが難しいことが分かってきた。血糖値が安定していない場合、ニューロンのエネルギー不足が起こりがちだが、じつは認知症やうつ病の基本的な原因の一つが、このニューロンのエネルギー不足なのである。最も有効な対策は、エネルギー不足に留まっている時に手を打つことであるが、エネルギー基質であるケトン体をうまく使えば脳の老化を遅らせることが可能である。本書では、神経科学者である著者が、ヒトの脳の発生・発達を可能にしたエネルギーについて、エネルギー代謝の観点から科学的に説明しながら、脳を長持ちさせ、また身体全体の健康にも役立つ栄養摂取の方法について考察する。インスリンと老化の関係や、鳥類の高い運動能力と健康長寿の秘密にも進化の過程から迫る。
もくじ情報：第１章　脳のエネルギー問題；第２章　ヒトの脳エネルギーシステム；第３章　認知症フリー社会へのコミットメント；第４章　インスリンは老化ホルモンか？；第５章　健康長寿を達成するための脳エネルギーシステム；第６章　難病から救う脳エネルギーシステム；第７章　ある母親の手記；第８章　エネルギーシステムから見る鳥類と獣脚類

佐藤　拓己(サトウ　タクミ)
１９６１年岩手県生まれ。東京工科大学応用生物学部教授。岩手県立一関第一高等学校理数科、東京大学農学部畜産獣医学科卒業。京都大学大学院医学研究科修了。博士（医学）。大阪大学蛋白質研究所研究員、財団法人大阪バイオサイエンス研究所研究員、岩手大学工学部准教授、米国サンフォード・バーナム研究所研究員を経て現職。麻布大学獣医学部客員教授兼務。専門は神経科学、抗老化学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）