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内容紹介・もくじなど
内容紹介:2013年の精神保健福祉法改正の過程で、長期在院精神障害者の地域移行支援の選択肢として急浮上してきた「精神科病棟転換型居住系施設」構想は、厚労省による精神科医療全体の再編を目論むマクロレベルの政策動向として看過できない問題である。病棟転換型居住系施設問題は、単なる障害者施策の選択の問題ではなく、障害者権利条約に照らしても、障害をもった人たちが果たして条約に言う「市民」となり得ているかどうかという根源的な問題を孕んでいる。「病院で死ぬということと、病院内の敷地にある自分の部屋で死ぬということには大きな違いがある」という言葉の裏側には、精神科病院の看板を架け替え、患者をゲストと呼び換えた…(続く)
内容紹介:2013年の精神保健福祉法改正の過程で、長期在院精神障害者の地域移行支援の選択肢として急浮上してきた「精神科病棟転換型居住系施設」構想は、厚労省による精神科医療全体の再編を目論むマクロレベルの政策動向として看過できない問題である。病棟転換型居住系施設問題は、単なる障害者施策の選択の問題ではなく、障害者権利条約に照らしても、障害をもった人たちが果たして条約に言う「市民」となり得ているかどうかという根源的な問題を孕んでいる。「病院で死ぬということと、病院内の敷地にある自分の部屋で死ぬということには大きな違いがある」という言葉の裏側には、精神科病院の看板を架け替え、患者をゲストと呼び換えただけの収容施設や、公共交通機関もない山中の僻地に居住施設が作られ、終末施設化している実態がある。高齢精神障害者が毎年2万人も亡くなっていくなかで、精神障害者が地域で普通に暮らしていけるようになるために必要なことは、施設から施設へハードを移行させるのではなく、ハードからソフトへ、コミュニティケアのネットワークに移行させることである。病院主導によって医療と福祉を統合していくのか、医療と福祉の機能を明確に分離するべきなのかは、社会保障の政策原理と財源配分にかかわる国家戦略上の問題である。にわかに争点となった精神科病棟転換型居住系施設を奇貨として、精神障害者の地域移行と社会的「平等」について多面的に考察する。
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