内容紹介：山形県庄内地方と出羽三山を主舞台として、人間の生と死と再生の問題に正面から向き合って来た山伏伝説を辿りながら、日本人が現代まで心の底流に抱き続けて来た信仰の内奥に迫る大人のための歴史紀行ミステリー。
東北三大霊場の出羽三山で山伏が殺された！？水鳥長造の東北三大霊場ミステリーシリーズ第三弾。東京神楽坂の閑古鳥が鳴く診療所で暇を持て余している水鳥院長は、日本海の夕陽が綺麗だと聞きつけ、夏の終わり最上川舟下りを楽しみ、山形県鶴岡市の由良海岸にやってきた。そこで水鳥はこの地が第三二代崇峻天皇が日本の天皇史上唯一臣下によって暗殺されたため、その息子の蜂子皇子が飛鳥の都から落ち延びて来て、修験道を始めた伝説の地であることを知った。しかし模範的山伏として知られている長岡賢一が近くの八乙女浦（やおとめがうら）で死体で発見される事件が起き、その背中には鮮やかなオレンジ色の岩ユリが一輪置かれていた。奇遇が重なった水鳥は、そのまま羽黒修験道で最も重要とされる秋の峰入り行事を見学に行くことになった。