内容紹介：父は大酒呑みの鍛冶職人だった。母とは２歳で死別した。綺麗な着物を着せたる、という父の誘うような言葉に乗じて、１２歳だった彼女は、気が付けば菜乃葉の名で大阪にて舞妓見習いをさせられていた。
綺麗な着物を着せたる。道楽者の父の言葉に誘われて、十二歳だった私は、気がつけば大阪で舞妓見習いをしていた。それからは苦界を生きて、生きて、生き抜いた。十四の時に切り落として旦那に突きつけた小指は、いつの間にか遠い過去になっていた―。芸妓、社長夫人、映画女優を経て、３８歳で出家。明治から昭和を走り抜けた、ある女性の流転の日々。

窪　美澄(クボ　ミスミ)
１９６５年東京都生まれ。０９年「ミクマリ」でＲ‐１８文学賞大賞を受賞しデビュー。１１年『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、１２年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、１９年『トリニティ』で織田作之助賞受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）