抽象美術の登場は、美術の姿そのものを変えてしまった。社会における芸術の意味と価値を問い続けながら、さまざまな変革が展開する。

フォーヴィスムとキュビスムという美術革命で幕を開けた二〇世紀は、抽象芸術の登場でその変革を加速させた。新しい表現は伝統的な美術の有り様を突き崩し、美術とそうでないものとの境界線は意識的に解体されていく。日常や社会における美術の意味と価値が問い直されるなか、新たなメディアや手法、概念を用いた試みは更新され続けた。二〇世紀美術は何を表現しようと革新を繰り返したのか。今・ここへとつながる多様な展開に迫る。
もくじ情報：序章　二〇世紀西洋美術史を語るために；第１章　抽象芸術の成立と展開；第２章　イメージと物；第３章　第二次世界大戦後の抽象芸術；第４章　現代生活と美術；第５章　身体表象と二〇世紀美術；第６章　美術と政治；第７章　美術とさまざまなメディア

井口　壽乃(イグチ　トシノ)
１９５９年生まれ。筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。博士（芸術学）。現在、埼玉大学大学院人文社会科学研究科教授。専門は近現代中欧の美術、デザイン史、映像論